DTAL(旧RCEAL)留学記録

2010年1月から2014年半ばまで在学していたケンブリッジ大学理論・応用言語学科でPhDを取得するまでの記録です。

Eurosla 2012

一昨年のレッジョ・エミリア(イタリア)昨年のストックホルム(スウェーデン)に引き続き、今年も9月5日-8日にEuroslaに参加してきました。今年の開催地はポーランドポズナンにあるAdam Mickiewicz University。東欧は初めてなので楽しみでした。


また今年はDoctoral Workshopで発表しました。SLA系の学会で発表するのは実は初めてでしたが、欲しかったフィードバックも頂け、私にとって有意義な発表となったと思います。


拝聴した発表についてはここにまとめましたので、本記事ではそれ以外について記します。


本学会はプログラムを見た時から日本人が多いように感じていました。実際に現地でも多数の日本人研究者の方にお会いし、お話させて頂くことができました。そこで、本学会の日本人の発表者の割合はどれくらいなのか、その割合はこの数年で増えているのかどうかを見るために、ウェブ上で入手できる過去のEuroslaの最終プログラム*1を基に、(1)名前から日本人とおぼしき筆頭発表者の数、(2)当該年の総発表数をカウントしました。カウントしたのは通常発表、Doctoral Workshop、ポスター発表で、Colloquiaやワークショップ、Language Learning Round Table、それに基調講演はカウントが難しい場合もあるため含めませんでした。以下がそれを図示したものです。2006年と2009年は最終プログラムが見つかりませんでした。また私が用いた2008年のプログラムにはDoctoral Workshopとポスター発表が載っていませんでしたので、それらを除外した数字になっています。

横軸が年、その下のカッコ内が開催地、縦軸が日本人筆頭発表者の割合です。プロットしている数字は「日本人筆頭発表者数/総発表件数」です。lowessとは局所的に重み付けした回帰関数で、データ(特に散布図)のおおよその形を示すためなどに使われます。lowessを見ると日本人発表者の割合は2005年から2012年にかけて伸びているように見えますが、カイ二乗検定\textit{\chi^2}(5) = 3.86, p = 0.57)にかけても、年を独立変数、割合を従属変数とする回帰分析*2にかけても(F(1, 4) =1.80, p = 0.25)有意にはならないので、Euroslaにおいて日本人による発表件数の割合が伸びているとは結論づけられなさそうです。これはケース数が極端に少ない(N=6)ことも一因だと思われますので、また来年以降データが溜まっていけば(そして日本人発表者の割合の推移傾向がこのまま続けば)有意になるかもしれませんが。


また実数を見てみても、私が参加し始めた2010年からは19→14→19と必ずしも増えているわけではありません。ただヨーロッパで開催される学会で、筆頭発表者の1割程度を日本人が占めるというのは、善戦している(むしろoverrepresented?)と言えるのではないでしょうか。体感としても韓国や中国など他の東アジア諸国と比較して日本人の割合は相当に高いように思いました。


以下が作図に用いたRコードです。生データも一行目に含めています。

Eurosla = data.frame(year=2005:2012, Japanese=c(8, NA, 16, 5, NA, 19, 14, 19), total=c(111, NA, 176, 113, NA, 177, 155, 181))
Eurosla$ratio = Eurosla$Japanese/Eurosla$total
par(family="HiraKakuPro-W3")
plot(Eurosla$year, Eurosla$ratio, type="n", xaxt="n", yaxt="n", xlab="年", ylab="日本人筆頭発表者の割合", main="Euroslaの日本人発表者の割合(日本人筆頭発表者数/総発表数)")
axis(1, at=2005:2012, label=paste(2005:2012, "年", sep=""))
axis(2, at=seq(0.05, 0.10, 0.01), label=paste(5:10, "%", sep=""), las=1)
text(Eurosla$year, Eurosla$ratio, paste(Eurosla$Japanese, "/", Eurosla$total, sep=""))
lines(lowess(Eurosla$year[!is.na(Eurosla$ratio)], Eurosla$ratio[!is.na(Eurosla$ratio)], f=1), lty=2)
legend("bottomright", "lowess", lty=2)
par(family="Helvetica", xpd=NA)
text(2005:2012, 0.032, c("(Dubrovnik, Croatia)", "(Antalya, Turkey)", "(Newcastle, UK)", "(Aix-en-Provence, France)", "(Cork, Ireland)", "(Reggio Emilia, Italy)", "(Stockholm, Sweden)", "(Poznan, Poland)"), cex=0.7)


さて、ポーランドは物価が安いため、英国からの距離と宿泊数の割にそれほど費用はかかりませんでした。航空券はRyanair(格安航空会社)で1万5千円程度でしたし、宿泊費は一泊3000円強で、広々としたツインルーム(全然必要なかったのですが・・)に泊まることができました。これほど安いのであれば滞在を延ばし、クラクフワルシャワ、あるいは国境をこえてベルリン辺りに遊びに行けば良かったと後悔しています。


以下、ポズナンで撮った写真の内の数枚です。


ポズナンの観光名所、旧市庁舎


カラフルな建物が並びます。英国とは大分違う感じがします。


ビール!


会場です。Faculty of Englishの建物だそうです。


ポーランドの国民酒、ウォッカ。滞在中はこの一杯しか飲むことができず、悔しくて土産にウォッカを買って帰ってきました。


ピエロギというポーランドの餃子。おいしかったです。


来年のEuroslaはアムステルダムでの開催のようです。来年の今頃はどこで何をしているのかわかりませんが、良い場所ですし、もし行けるようであれば是非また行ってみようと思います。

*1:EuroslaのConferenceページを見てみると、少なくとも2005年以降は公式サイトが毎年立ち上がっており、ぞれぞれを見ると2006年と2009年以外は最終プログラムを今でも見ることができました。

*2:追記:割合なのでロジスティック回帰の方がいいですね。結果は変わりません。