DTAL(旧RCEAL)留学記録

2010年1月から2014年半ばまで在学していたケンブリッジ大学理論・応用言語学科でPhDを取得するまでの記録です。

現在までの流れ-3/4

奨学金の要項がJASSOから発表されるのを待つと決めた矢先の4月上旬に、指導教官の先生を通してCambridge ESOLがケンブリッジ大学への奨学金を出しており、その時点で応募可能であることを知りました。しかし奨学金の対象となっている研究科はコンピューターサイエンスで、純人文系である私が受かるとは思えませんでした。ただ

  • Cambridge ESOLはCEFR関係の研究を博士課程で行うことを条件に奨学金を出しており、CEFR自体は私の分野寄りであること
  • 不合格であってもこちらにマイナスはないどころか、海外の院(応募先がCambridge ESOLなので厳密には大学院ではありませんが)に出願するプロセスを一通り経験でき、それはその後JASSOの奨学金を得た後の出願の際に役立つであろうこと

から、出してみる価値はあると判断しました。


出願書類は通常の海外の大学院と変わらず、研究計画書や推薦状や成績証明書などでした。私が最も力を入れなければならなかったのは研究計画書で、ほかは基本的には過去の自分頼み(成績証明書の類)あるいは先生方頼み(推薦状)の書類でした。コンピューターサイエンス向けの研究計画書はもちろんそれまで書いたことがなく、どうせダメなのだろうと思いながらも一応の形でドラフトを4月中旬に書きました。さてそれを推敲して行こうかと考えていた時に、Cambridge ESOLの奨学金の締め切りは4月末であることを知ります。実はその直前にケンブリッジ大学では2010年1月にPhDプログラムをスタートできることを確認しており、迂闊にも奨学金の締め切りもそれならばもう少し先だろうと考えてしまっていました。よく考えると候補者を絞らないといけないので、年度のいつプログラムを開始させようと、奨学金自体の締め切りは年度始めである9月スタートのプログラムに合わせて設けられているに決まっています。


4月中旬というギリギリ間に合うタイミングでそれを知れたのはある意味幸運だったのかもしれません。幸いにして書類はほとんど揃えていたので、慌てて指導教官の先生に推薦状をお願いし、研究計画書を少し書き直し、EMSで出願(というか応募)しました。


さて、5月の上旬になり、ぼんやりとJ-SLA(学会)のHPを見ていると(MLからの情報だったかもしれません)、5月下旬の大会の基調講演はケンブリッジの先生のようでした。これには少し驚きました。なぜなら上述したCambridge ESOLの奨学金がコンピューターサイエンスに出るくらいなので、ケンブリッジ大学にはSLAや外国語教育などを専門とする方はほとんどいないのではないかと考えていたためです。その方の所属を確認してみると、RCEALとあります。


調べてみるとRCEALとは「Research Centre for English and Applied Linguistics」の略で、その名の通り応用言語学など私の分野に近いところを扱っているケンブリッジ大学の研究科のようでした。また詳細にHPを読み込んでみると、NLPなどの理系分野と心理言語学などの文系分野が融合されている、私の興味に非常に合う研究科なのではないかという印象を受けました。そこで基調講演をされる先生に連絡を取り、J-SLAの会場でRCEALについてお話を聞かせて頂けることになりました。


ここで、更なる幸運が訪れます。5月下旬にコンピューターサイエンスへの奨学金はやはり不合格であるとの連絡を受けたのですが、同時に、コンピューターサイエンスでは不合格であるものの、同じ奨学金がRCEALにも出ているため、この研究計画書であればそちらにapplicationを回してはどうか、と言うのです。最初からRCEALにも奨学金が出ていることを知っていればそもそもそちらに出していましたが、結局このような機会を得たのは渡りに船であり、JASSOの奨学金からここに出願することも考え始めていたため、幾つか確認のメール(ここで落ちても再度出願することに問題はないか、等)をやり取りした後に、RCEALに書類を回してもらいました。本当は研究計画書をRCEAL向けに書き直したかったのですが、5月末が奨学金の締め切りらしく、コンピューターサイエンスに出したものをそのまま転用せざるを得ませんでした。


J-SLAの会場では予定通りRCEALの先生にお話を伺うことができ、私が望んでいる勉強がそこではできそうであることを確認しました。これを経て、JASSOの奨学金の第一志望もここに変更しました。


RCEALに回してもらった方の奨学金は、6月上旬にinterview testにshortlistされた(=最終候補に残った)という連絡がありました。英国在住であれば実際にケンブリッジに行って面接するそうですが、私の場合はそうは行かず、翌週に電話でインタビューするとのことでした。非母語話者にとって電話でのインタビューは辛いものがありますが、他に方法もありません。ただ電話だと予め準備した原稿を堂々と見ながら話すことができるという利点もあるので、原稿作りとそれを読む練習を行い、インタビュー当日を迎えました。


インタビューは残念ながら決してうまく行ったとは言えない内容でした。そもそも予測していた質問(=応答の原稿を作った質問)と実際の質問が大きくズレていました。私は提出した研究計画書に関する質問が中心となると読んでいたのですが、蓋を開けてみるとそれに関する質問は一切なく、どちらかと言うとこれまでの研究背景などを問われ、ほかには答に迷わない質問(事実確認や、ケンブリッジに来てもコースワークをする意欲があるかどうか等)が大半でした。


電話が終わったと同時に落ちたと思いましたが、6月下旬に来た結果もやはり不合格。Cambridge ESOLの奨学金絡みの機会は残念ながらこれで幕を閉じました。しかし当初の

不合格であってもこちらにマイナスはないどころか、海外の院に出願するプロセスを一通り経験でき、それはその後JASSOの奨学金を得た後の出願の際に役立つであろうこと

という目的は十二分に果たし、大学院への出願やそれに関するやり取りなどには大分慣れましたし、またRCEALの方々にも少しくらいは私のような人間がRCEALの博士課程に入学したがっているということが伝わったのではないかと思います。


次回はこのCambridge ESOLの奨学金と同時並行で進めることになったJASSOの奨学金について記します。