DTAL(旧RCEAL)留学記録

2010年1月から2014年半ばまで在学していたケンブリッジ大学理論・応用言語学科でPhDを取得するまでの記録です。

現在までの流れ-4/4

話を5月の頭に戻します。


前々回のエントリーに記したように、当面はJASSOの奨学金の要項が発表されるのを待っていたものの、要項が私のニーズ(授業料+生活費の給付型)を満たさない可能性や仮に満たしていて応募しても受からない可能性があるので、日本で勉強を続ける場合のことも想定・準備しておく必要がありました。その一環として、学術振興会の特別研究員(通称「学振」)に応募することにしました。学振は5月下旬が締め切りですが、書かなければいけない書類はそれなりの量がありますので、ゴールデンウィーク前後から書き始めていました。


それがJASSOの奨学金に活きました。半年間待ちに待ったJASSOの奨学金の要項が、ようやく5月の上旬に発表されたのです。昨年度までの文科省奨学金と照らし合わせてみると、航空券代が出なくなったくらいで、内容に大きな変更は見られません。要項を読むと同時に応募を決めました。


しかしJASSO(や昨年度までの文科省)の奨学金は、日本の大学が自大学の学生を海外に留学させるためのプログラムを組み、そのプログラムから留学する学生に対して奨学金給付団体(JASSO・文科省)が奨学金を支給するという形を取るため、まずは自大学に応募することから始めなければなりません。確認してみると昨年度までに引き続き今年も自大学で当該プログラムの募集を行うとのことでした。


さて本年度の奨学金には私にとって有利な点が二点ありました。

  1. 応募期間が短い
  2. 2010年3月までに修士あるいは博士課程をスタートさせることが条件となっている

1に関しては、例年1ヶ月以上は確保される応募期間が、今年は3週間ほどだったと思います。書類集めにかかる時間を考えると、応募するか否かを検討する時間はほとんどないのではないでしょうか。これは昨年度から大きな変更がなければこの奨学金に応募することを早くから決めていた私にとって有利であったと思います。2に関しては、このタイミングでの要項発表だと、特に修士号取得を目的に留学を予定している人は応募しづらいということがあります。修士課程(国は問わず)や米国の博士課程は、春先くらいまでには出願し、5月くらいまでには入学許可を得ているのが通常のパターンです。年度始まりである9月から入学しようと思うと、どうしてもそうなるのです。しかしそれでは、本奨学金を用いて留学するためには、要項発表前から細部が不明の奨学金を頼りに出願していなければなりません。あるいは既に入学許可を得ている本年度留学予定者が本奨学金に申し込むというパターンも考えられますが、その場合は既に何らかの金銭的援助を他の箇所から得ていることが多いのではないでしょうか。これらから、データ的な裏づけはないものの、応募者が例年よりは集まりづらいのではないかと考えられます。しかし私のような米国以外の博士課程入学を目指す志願者にとってはこれらは有利に働きそうだと考えました。以上二点から、今年はチャンスであると感じていました。


ただ不安要素がないわけではありませんでした。本年度の募集人数は50人でした。昨年度まで文科省奨学金の応募人数は年々増え続け、昨年度は応募者が124人、合格者が72人でした。これは修士号取得を目的とした留学希望者も含めた人数ですので、PhDを目指す留学希望者にとっては倍率はもう少し厳しいのではないかと思います(文科省の出費が修士よりも博士の方が多くなるため慎重になるのではないかという憶測です→追記:少なくとも今年度に関しては誤りであったようです(ここ参照))。この傾向と今年度の募集人数、それに上述した二点を総合すると、さて倍率は上がるのか下がるのか。考えても答は出ませんし出たところでどうしようもないので、この辺りでこの類の思考は打ち切っていました。しかしこの点も後で180度ひっくり返ることになります。


さて、準備期間が短いながら何とか必要書類をかき集め、6月の頭に自大学に応募書類を提出しました。前回のエントリーに記した5月末のJ-SLAでのやりとりもあり、第一志望はRCEALに、第二志望はそれまでの第一志望校を据えました。さて応募書類を実際に出すまで知らなかったのですが、自大学にも学内選考がある旨を提出した際に知らされました。これだけの思いを持って応募したので学内選考で落ちるわけにはいきません。翌々日が学内選考であったため、慌てて昨年度までの文科省奨学金を受けて英国留学中の同期に昨年度の学内選考の内容を尋ねたところ、「あまり覚えていないが簡単なことしか尋ねられなかった」とのこと。そうは言ってもそれから受ける方は不安になるわけで、一応の準備をして面接に望みました。


蓋を開けてみると確かに容易な質問ばかりで、全受験者に共通の5問のみとのことでした。

  1. 志望動機は?
  2. この留学によって何を達成したいか?
  3. 留学中の計画は?
  4. 将来の計画は?
  5. (忘れました)

ほとんどが既に応募書類に記してあることであったため、迷うことなく応答できました。さすがに大丈夫だろうと思ってはいましたが、学内会議を経て翌週に合格の連絡を頂き、無事JASSOに推薦してもらえることになりました。


6月中旬の学内選考の結果の連絡と同時に、更に嬉しい知らせが舞い込みました。補正予算の関係で、50人を予定していた募集人数が250人になったというのです。上にも記しましたが、昨年度の文科省奨学金の「応募者」は124人でした。ただでさえ上で述べた理由により応募者数は減る見込みであるのに、そこまで募集人数を拡大するとほとんど全員が合格するのではないかと感じました。しかし定員割れするような給付型の奨学金をJASSOが設けるとも思えず、JASSOの方が文科省よりも遥かに集客力があるのではないか等も考えましたが、はっきりとはわかりませんし、これもやはりたとえわかったとしてもどうしようもないので考えるだけ無駄です。(追記:やはりそれほど応募者が集まらなかったようで、結果的に応募者は70人強、合格者は50人にも満たなかったようです。参照


そうこうしている内に7月中旬になり、書類選考に合格したとの連絡をJASSOから受けました。最終選考は面接ですが、その時間は「一人当たり五分程度を予定」と書いてありました。5分間ではまともに審査できそうにありません。従ってやはり募集人数に対して応募者数が少なく、「基本的には合格」というスタンスなのではないかと考えられます。この思いは面接当日に人文社会系合わせて40人程度しか受験者がいないことを知り、更に強くなりました。


しかしそうは言っても全員合格ということは面接をする手前なさそうですし、そもそも私は面接のようなアウトプットが苦手なので、当日はそれなりの準備をして臨みました。以下が当日の面接の質問です。面接官は5人でほかにJASSOの職員と思われるタイムキーパーの方が2人いらっしゃいました。


控え室に以下の張り紙
「面接の冒頭に、留学しようと思った動機、留学先での計画を、英語又は日本語で1分以内で話してください」

  1. 上記の問
  2. もう少し最後の部分を説明してください
  3. 随分と単純に思えるのだが、それを一歩進めて何かないのか?研究と呼べるのか?
  4. 海外でこういう研究はされているのか?
  5. これは教科書会社がするような研究ではないのか?
  6. そのアカデミックな価値は何か?
  7. それがケンブリッジでできるのか?
  8. 入学許可は得ているのか?



3-5が6を尋ねたかったのだと全く気づかず、「英語教科書改善」を中心に据えて話し続けてしまいました。思えば非専門家を相手に研究の話をしたことはなく、当初は教科書研究が学術的に感じなかった感覚も忘れていました。6で気づいて慌てて理論面から補足したものの、終わった直後はやってしまったかと思いました。JASSOだと直接的に国のためになることをアピールした方が良いかと思い教科書改善を中心に研究計画を語ったのですが、先に理論を語り、その示唆として教科書改善を出した方が良かったのかもしれません。実際の面接時間は7-8分だったと思います。


予想以上にこちらの話が伝わらずに後悔の念がありましたが、8月上旬に無事合格の連絡を頂きました。やはり募集人数の多さが効いたようで、現在JASSOではこの奨学金追加募集を行っています。


紆余曲折を経ましたが、念願の留学まであと一歩です。ここで失敗すると何も残らないので、何がなんでも留学を決めたいです。次回は現状と今後の予定を記します。