DTAL(旧RCEAL)留学記録

2010年1月から2014年半ばまで在学していたケンブリッジ大学理論・応用言語学科でPhDを取得するまでの記録です。

English Profile Seminar 2011

ケンブリッジで標題のイベントがありました。一年に一度開催されている、EP関係者が一堂に会しEP関連のプロジェクトの進捗報告などを行う場所です。プログラムはこちらから。


私もこの一年で行った研究の一部(形態素習得順序における母語の影響)を発表しました。学会等での発表は今回で通算6回目になりますが、最後に発表したのが2009年の8月なので、久しぶりの研究発表でした。


これまでの5回は全て修士論文関係で、修士論文は手法の目新しさもあり必要な説明量が多くなった結果、早口でスライド枚数も多く、ほとんど内容は伝わらず、という苦い経験を何度もしていました。5回も失敗すればさすがに学習するようで、今回は事前に指導教官の協力の下、肝心な情報まで省いているんじゃないかと不安になるほど情報量を削りました。その結果、話すスピードが随分とゆっくりになり、トピックの馴染み深さ(文法形態素習得順序研究)も手伝って、今回は内容は概ねオーディエンスに伝わったのではないかと思います。


この過程で学んだのは、少なくとも私にとっては口頭の研究発表では練習量ではなく(それも重要だとは思いますが)、スライド一枚あたりの情報量やスライド枚数(いずれも少ない方が良い)などの見せる内容の部分に時間を割く方が、オーディエンスの負担を減らすことにより直接的に繋がり、結果的に理解してもらえる確率も高くなる、ということです。練習によりワーディングなどを多少改善するよりも、そもそもの発表内容に変更を加えた方がより大きく良くなる、というのは考えてみれば当然かもしれません。


セミナーのまとめとしてMichael McCarthy氏がお話されている時に私の発表に言及され、「Akiraの発表のように既存のSLA理論を寄与のものとして受け取るだけでなく検証する、というのもEPでできる事の一つ」との旨を仰ってくださいました。こういう感じの捉え方をしてもらえたのは嬉しかったです。English Profileは指導・評価といった応用・実用的な面に興味のある関係者が多いように思いますが、現時点でのEPのキーワードであるcriterial featuresは(少なくとも私にとって)最も直感的にはまずSLAの枠組みで解釈すべきものです。


ただfeature数が膨大であるため完全にデータが先行してしまい、それをうまく解釈するための理論的枠組みが既存のSLA理論では存在しないように思います(CLCのように大量のデータに基づいて研究が行われたことは過去になかったので当然です。個々のfeatureに関してはあるかもしれませんが)。そこでCLCを用いて既存のSLA理論に貢献できる部分はないかと考えて思いついたのが形態素習得順序研究における母語の役割でした。今回はたまたまSLAの定説の検証という形を取りましたが、既存理論の拡張などにもCLCは有用だと思いますし、今後の研究も(CLCではなく別の学習者コーパスを用いる予定ですが)そういう方向で考えています。この辺り(SLA理論内でのcriterial featuresの位置づけ)は自分でもまだ整理できていないので、引き続き考えて行くつもりです。