DTAL(旧RCEAL)留学記録

2010年1月から2014年半ばまで在学していたケンブリッジ大学理論・応用言語学科でPhDを取得するまでの記録です。

Eurosla 2011

昨年のレッジョ・エミリアに続き、ストックホルム大学で行われたEuroslaに出席してきました。Language Learning Round TableやDoctoral Workshop、基調講演を含め計40発表を聞いたのですが、文法形態素やL1転移に関する研究も多くあり、楽しめました。コーパス絡みの研究はほとんど見られませんでしたが、こちらは今週後半にLearner Corpus Researchがあるのでよしとします。むしろSLA研究ではコーパスがまだ普及し切っておらず、コーパス言語学者の活躍の余地がある、とも言えそうです。


今回、自分が拝聴したほぼ全ての発表についてツイッターで実況中継を行い、それをここにまとめました。そんなことをするつもりは当初はなかったのですが、特に国際学会の場合はwi-fiが全ての部屋で使える場合も多く、自分用のメモを兼ねて要旨をどんどんツイッターに投稿していくというのは面白い試みかもしれません。惜しむらくは学会中に学会についてツイートしていたのは私の他にもう一人(その方もケンブリッジの同じ研究科所属)しかおらず、参加者間でツイッター上でコミュニケーションを取れなかったことでしょうか。最近ではツイッター上で学会参加者間で意見交換し、その後に(コーヒー休憩などで)初めてリアルで会う、ということもよくあるようです。まあ実際に面と向かって話せということかもしれませんが。


今回特に面白いと感じた発表は以下。

  • タイトル:The L2 perception of inflectional endings in Dutch: The role of L1 background and L2 proficiency
  • 発表者: Loes Oldenkamp@Radboud University, Nijmegen
  • 背景&研究設問:L2屈折接辞の産出技能の研究は多くあるが、受容技能の研究はあまりない。L2屈折接辞を聞き取ることができているのかを見る。
  • 被験者:L1トルコ語、L1モロッコ語、L1アラブ語、L1中国語のL2オランダ語学習者。L2言語能力はCEFRのA1〜B1レベル且つ低学歴。オランダに最低数年は住んでおり、L2教育も受けている(=instructed learners)
  • 課題:picture selection task
  • 対象言語項目:三人称単数vs複数と単数名詞vs複数名詞の二種類
  • 刺激:例えばZe kusteen jongen(単数)とZe kussen een jongen(複数)の対比など(?)。屈折部分を聞き取らないと正しい絵を選択できないようになっている。
  • 結果:
    • 動詞の屈折の正答率が0.326と非常に低かった
    • 熟達度の高い学習者の方が正答率が高い
    • 名詞の複数形の屈折に関して(←少し怪しい)、L1トルコ語とL1モロッコ語>L1中国語
  • 結論:名詞の屈折変化も動詞の屈折変化も理解するのが難しいが、特に動詞でその傾向が顕著。屈折部分と重複する情報がないからではないか。
  • 感想:知覚の顕著さ(perceptual salience)はよく文法形態素習得順序研究の文脈で取り上げられるので興味があるのですが、本研究は学習者が本当に聞けていないことを実証しました。次は音素の数と聞ける・聞けないの関係を知りたいです。



以下、写真を何点か貼ります。


ストックホルムでの最近の流行りは「寿司」。ちょっと歩いただけですが、寿司屋を相当件数見かけました。以下は地球の歩き方にも載っている「三代目 加藤」という店の寿司。日本の(回らない)寿司屋と比較しても劣らぬ美味しさでした。



学会会場。ストックホルム大学内にあるAula Magnaという建物です。



市庁舎。ノーベル賞授賞式後の晩餐会・舞踏会が行われる場所です。



市庁舎内のGolden Hallという部屋。ノーベル賞受賞者の舞踏会を毎年ここで行っているとのことです。




ストックホルムにある国会議事堂



スウェーデン料理はサーモンとミートボールが有名ですが、こちらはトナカイの肉。初めて食べましたがなかなか美味しかったです。



Euroslaは来年はポーランドのAdam Mickiewicz Universityで開催されるようです。今年はタイミングが悪く発表できなかったのですが、来年こそは発表したいです。