DTAL(旧RCEAL)留学記録

2010年1月から2014年半ばまで在学していたケンブリッジ大学理論・応用言語学科でPhDを取得するまでの記録です。

卓球@ロンドンオリンピック

ロンドンオリンピックが開催されていますが、ケンブリッジは至って穏やかです。例年と同じように学生が帰国・帰省し、観光客がちょっと増えてきたかな程度です。ロンドンは大混乱かというとそうでもなく、オリンピックが始まってから何度か行った感じではむしろ普段よりも電車・地下鉄はスムーズに運行されているように思います。これはひとえに相当数のスタッフが交通整理に当たっていることが理由かと思いますが、それと同時に、オリンピック期間中はロンドンの交通機関が麻痺する等の話が何度も出ていたため、普段それらを利用しているような人達がロンドン中心部を避けているというようなこともあるかもしれません。


さて、オリンピックですが、卓球を四日間、10スロット観戦してきました。一日が典型的には三スロット(午前・午後・夜)に分かれていて、スロット単位でチケットを購入する必要がありました。チケットはA〜D席まであり、私が購入した時はA席が£100弱、D席が£20とカテゴリーにより値段に大きな差があります。席の位置がカテゴリーにより全く違うのかというとそうでもなく、私はC席とD席で複数回ずつ観戦しましたが、少なくともこの二つのカテゴリー間では大差ありませんでした。会場は昨年11月のITTF Pro Tour Grand Finalsが行われたExCeL Arenaでしたが、その時と比べると観客数が桁違いであるためか、全体的に卓球台から遠く、見えづらかったように思います。


私が観戦したのは種目で言うと以下です。

  • 男子シングルス四回戦(ベスト16→ベスト8)
  • 女子シングルス四回戦(同)
  • 女子シングルス準々決勝
  • 女子シングルス準決勝
  • 女子団体準々決勝
  • 女子団体準決勝の片方
  • 男子団体準決勝


いずれの種目も中国を筆頭にアジア勢が引き続き強く、ヨーロッパ勢は苦戦を強いられていました。しかし開催地がヨーロッパであるため、アジア人選手vsヨーロッパ人選手の対戦であった場合は観客がヨーロッパ人選手を応援する側に回るという、ヨーロッパらしい一面も見られました。アジアでは同じアジア人だという理由だけで日本人が中国人選手を応援したりしませんからね。


日本人選手に目を移すと、水谷は個人四回戦でメイス(デンマーク)に負けたのが残念。メダルを期待していたのですが・・。ただ団体戦では無敗ですから、やはり日本のエースは水谷なんでしょうか。男子の個人戦代表のもう一人は岸川。四回戦で呉尚垠(韓国)を破る金星を挙げ、日本人男子選手で初の8強入りを果たしたのは立派です。ただ準々決勝の相手が王皓(中国)とあっては沈むしかありません。男子団体はまさかの準々決勝で香港に敗退。準決勝のチケットを持っていたのですが・・・。二点出場の選手が二点ずつ取り合ったので、結果的にダブルス勝負という戦いでした。


女子の活躍は目覚しかったですね。石川が準決勝に進出、金メダリストとなった李暁霞(中国)に敗れ、三位決定戦でも馮天薇(シンガポール)に敗退しましたが、4強入りは素晴らしいの一言です。福原も準々決勝で敗れましたが、こちらも相手が世界ランクトップの丁寧(中国)なのでやむを得ないように感じます。女子団体は準決勝でシンガポールを下し、見事日本卓球界初のメダルを獲得。福原がトップで馮天薇に勝った一戦がなんといっても大きいのでしょう。石川もシングルスで勝っている王越古に圧勝し、ダブルスもその流れをそのままに、という感じでした。決勝戦は中国に0-3の完敗でしたが、現実的に望み得る最高成績を挙げたと思います。BBCの中継で言っていましたが、女子団体戦に出場した16チームの内、中国からの帰化選手を擁さないのは日本を含めて3チームのみだそうです。そのチームが中国に次いでの銀メダルなのですから、十二分に胸を張るべき結果でしょう。


終わってみれば、引き続き中国の一強を示した大会でした。シングルスは男女共に金メダル・銀メダルを独占し、女子団体では全試合ストレート勝ちで金メダル、男子団体ではシングルスとダブルスを一つずつ落としたのみで金メダルを攫って行きました。格が違うとはこのことですが、その中にあって男子金メダリストの張継科(中国)を団体戦で破ったティモ・ボル(ドイツ)、同じく張継科を個人戦であわやというところまで追い詰めたブラディミル・サムソノフ(ベラルーシ)の二名には拍手を贈りたいです。ただ二人とも既にベテランですし、20年続いている中国一強を崩すには至らないでしょう。今後ヨーロッパに超新星が現れ中国の牙城を崩すのか、あるいは他のアジア勢がジワジワと中国との差を詰めていくのか、はたまた中国が今後も何十年とトップに君臨し続けるのかわかりませんが、その辺りも含めて今後の卓球界の動きを楽しみに見ていこうと思います。